合意したはずのことが、合意でなくなったとしたら?
以下の話は、少し前に友人から聞いたものだ。ここには教訓がある。
友人は不動産デベロッパーの会社を経営しており、四角形の土地にいくつかの建売住宅を建築していた。四角形の2つの辺は隣と境を接する道路になっており、残りの2辺は、別の不動産デベロッパーが所有する土地に隣接している。家の建築が始まる前には大量の土砂を運び出さなくてはならない。土砂を運び出す段階は「ムックシフト」と呼ばれている(ムックMuck=泥)。一日あたり60台から80台のトラックが6週間に渡り毎日出入りする。友人は、トラックを、他のデベロッパーが所有している隣接地を通すのが良いと考えた。隣接地の所有者は、どんな条件でこれを許すだろうか。よくある話であり、土地を所有者に返却する際に原状復帰、という条件で決着することが多い。ところが、隣接地を所有するデベロッパーは、ここで少しばかりの金儲けを目論んだ。トラックが自分の土地を通るようになれば近隣の住民にとっては有り難い話だし、建設工事が終わった時に近隣の道路の再整備する必要もなくなる。つまりwin-winだろう。
何回かの値段の叩き合いの後に(このやり取りは交渉と呼べるようなものではなかった)、友人は当初19,500ポンドを提案したが、最終的な決着額は26,500ポンドだった。双方は握手し、友人は契約書を相手のデベロッパーに郵送した。だが、相手はこれをサインせずに送り返してきた。「紳士協定があるので契約書は不要」とのことだった。トラックが土砂を運び始める1週間前、隣接地のデベロッパーが再び連絡してきて、追加の支払いを要求した。追加金額は「紳士協定」とは呼べないようなものだった。機知に富んだ我が友人は、この問題を違う側面から考えてみた。結果として、非の打ち所がないくらいに完璧で、実施可能な代替案を考えついた。ただし、既にその場所に住んでいる人にとっては完璧とはいえない。建築場所に、隣のデベロッパーの土地を介さずに出入りするのだから。
友人は隣の土地の所有者に会いに行った。彼は礼を言い、元来の「紳士協定」で合意した26,500ポンド以上の金額を支払うことは丁重に断った。代替案を手にしていた彼は、更なるひと押しを行った。「そちらが本来の26,500ポンドの合意を破ったことを考えると、その合意はもう有効ではありませんね。私としては、最初にお願いした19,500ポンドでなら考慮します」そしてさらに彼は続けた。「これは私からの最後の提案です」
隣接地の持ち主は、代替案を理解できず、合意を渋った。友人は結局代替案で進み、隣接地の持ち主は265,00ポンドをふいにした。
この話の教訓はなんだろう?
原文: Muck Shift
筆者について:
ロビン・コープランド
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