誰かを解雇するために最善の方法が存在するとは思えない。楽しいことではないし、簡単でもない。解雇する側のマネージャーにとっても、される側にとっても。
誰かを解雇をするために最悪の方法が存在するとも思えない。だが仮にそのような方法があるとしたら、マンチェスター・ユナイテッドが今週ルイ・ファン・ハール監督を解雇した方法は、かなりいい線行っているだろう。「特別な存在」ジョゼ・モウリーニョが後継者に指名されるという憶測が募っていたが、その可能性が現実となるまで、にわかには信じがたい話だった。
モウリーニョがマンチェスター・ユナイテッドに復帰するのではないかという憶測は、2015年にモウリーニョがチェルシーの監督に就任した時から囁かれていた。ユナイテッドの試合成績によって、噂は沸騰してゆく。結果が良ければ静かなもの、だが、悪ければ、地獄の釜を開けたような騒ぎになる。
今シーズンのFAカップでユナイテッドは素晴らしい結果を残した。エバートンとのセミファイナルに勝利、最終戦はクリスタル・パレスと戦った。5月21日土曜日、ウェンブリーにおいて、延長戦にもつれ込んだ後、クラブは第12回FAカップで優勝した。クラブにとってアレックス・ファーガソン監督以降初めてのトロフィーであり、ファン・ハール監督にとっては3年契約の2年目の終わりの出来事だった。記憶を紐解けば、1990年のFAカップ優勝が、ぱっとしなかったファーガソン監督のキャリアにどれほどプラスになったことだろうか。だが、FAカップ優勝は、今となってはそれだけでは十分ではなくなった。
最終戦の数時間前、BBSニュースは、ファン・ファールの退任とモウリーニョの監督就任を速報した。ファン・ファールの妻がBBCのWebサイトでニュースを読み、試合終了のホイッスルの少し前に夫に伝えたという。
考えてみるに、ユナイテッドとモウリーニョが交渉を進めていることを伏せておくことは不可能だろう。BBCのスポーツ担当デスクであるダン・ロアンによると、ユナイテッドはこのオランダ人に対して非常な敬意を払っており、モウリーニョとの交渉が進む最中も、秘密を守るべく必死の努力を続けてていた。そしてファン・ファールがチームをプレミアムリーグのトップ4に押し上げることを願っていた。
この目標が果たせなくなった後でさえ、クラブはFAカップを勝ち取った監督としての彼の立場を認め、コーチ陣にも何も通知せず、また、余計な推測が生じるようなコメントもしていないという。だが、クラブの経営陣の考えを長期にわたり秘密としておけると考えるのは甘すぎる。
土曜日にニュースが報じられた後、ファン・ファールを長く奇妙な状態に置き続ける理由は何かという論議が沸き起こった。オーナーのマルコム・グレーザーのクラブ経営方針について、また、クラブへの意思伝達の方法について、批判的な論議が沸き起こった。
前任者デビット・モースも、最善を尽くしたものの、残念ながら結果は全く伴わなかった。そして2年前、全く同じようにチームを去った。モースは、自分が解雇されたことを新聞で読んで知った。
交渉者にとって、これらの物語の教訓はなんだろうか。もしあなたが自分の信頼を大切にしたいのなら、交渉はできるだけ少人数に止め、ニュースが漏れてしまうことを避けなくてはならない。報道によると、ファン・ファール監督は報酬無しでも監督をつとめて良いと言っていた。現に彼は以前そうしている。そして今、ファン・ファールは、マンチェスターの彼に対する態度に非常に腹を立てている。彼はリーグマネージャー協会の高名な弁護士ポール・ギルロイを雇った。結果、支払われる一時金は450万ポンドとも報じられている。クラブにとっては高価な失言だ。
競合的、敵対的なスタンスは、相手の同じスタンスを誘発し、結果は高くつく。もしあなたが自分の信頼を守りたいなら、そして大切なビジネスパートナーとの関係を守りたいなら、礼を重んじ、無関係の他者を関与させず、プロフェッショナルな関係を心がけるべきだ。マンチェスター・ユナイテッドの本拠地オールド・トラッフォードに生息するブローカー達のようではなく。
ああ、ところで、プロとしての一生をマンチェスターで過ごしてきたライアン・ギグスに、次はどこに行くべきか、だれかアドバイスをしてやって欲しい。
原文: You're fired!
筆者について:
ロビン・コープランド
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