望ましくない決着

公開されました: 7 18 , 2016
投稿者: ロビン・コープランド

まったくもって望ましくない決着だ。

国民投票でBrexitに決着が付く前、UK首相であるデビッドキャメロン氏と、前ルクセンブルク首相にして現欧州委員会委員長であるジャン=クロード・ユンケル氏が交渉を行った。

非常に頭が切れるが交渉経験は限られているキャメロン氏は、同じく非常に頭が切れるがやはり交渉経験の限られているユンケル氏を相手に打席に立った。歩んできたキャリアは、キャメロン氏もユンケル氏も驚くほど似ている。議会のスタッフとして初期キャリアを積み、キャメロン氏の場合はメディア企業カールトン・コミュニケーションズで働いた期間があり、その後国政選挙に打って出た。ユンケル氏は法律を学んだが法律家として活動はしなかった。両者とも、ビジネスにおける血で血をあらうような交渉の経験は、あったとしても非常に少ない。自分たちの国を託す政治家達がもう少し社会経験を持っていればと思うことは多いが、まぁそれを望んだところで仕方がない。

キャメロン氏は、自分たちにとって望ましいと思われる決着の形を、交渉が始まる前に描いてみせた。交渉が始まる前にこれを明かしてしまうのは良くない考えだ。一方ユンケル氏は筋金入りの連邦主義者であり、キャメロン氏に時間を割く気はほとんどなかった。キャメロン氏はかつてユンケル氏が委員長に選ばれることを阻止するようロビー活動をしたことがあった。キャメロン氏だけでなく、英国のEU離脱について、ユンケル氏は一切時間を使おうとしなかった。そして巣に籠もり、戦いの狼煙が上がるのを待った。

キャメロン氏もユンケル氏も頂点を極めた政治家だ。両者とも同じようなバックグラウンドを持ち、同じような意見や哲学を持ったスタッフに取り囲まれている。スタッフたちは権限を有しており抵抗されることに慣れていない。もっとも、キャメロン氏がそれまでの4年間にわたって連立パートナーである自由民主党に妥協する姿勢をとり続けてきたという事実は言及すべきだろうが。いずれにせよ、キャメロン氏は交渉に雪崩れ込み、ユンケル氏は彼を迎え撃つ準備が出来ていた。

交渉相手が相手の組織に戻った際に、勝ち取ったと売り込める何かを与えることは非常に大切だ。合意内容を相手の組織にできるだけスムーズに実施させなくてはならないのだから。貰っている給料に値する働きのできる交渉者なら、誰でもこのように言うことだろう。もっとも今回は組織ではなく国だが。キャメロン氏がユンケル氏との交渉で持ち帰った合意は、どこか時の英国首相チェンバレンがヒトラーとの会談から持ち帰った内容を思わせた。合意は、懐疑主義者の多い中部英国地域(ロンドンと北アイルランドの間、国境の北のスコットランドを含む)の住民を納得させるものではなかった。ユンケル氏は会談の翌日、これで事は終わったと言わんばかりだった。彼は戦いに勝ったと感じていた。たぶんそれは本当なのだろうが、私は、ユンケル氏は負けたのではないかと思っている。英国はじきにEUから離れる。この事実をもって、現状に満足していない他の地域の人々も同じことが出来るのだと知らしめてしまった。かつての一つの交易ブロックだったものが断末魔にあえいでいる時期に、ユンケル氏はその地のリーダーをつとめるのだろうか?これはlose-loseの古典的な例だ。

直近で何が起こるだろう?労働党は投票をおこなうことなく次期首相を選出するようだ。ごく近い将来、次の首相はEU基本条約50条の手続きを始めることになる。英国とヨーロッパは、おそらく、これまで行われたあらゆる交渉の中で、もっとも困難で複雑な交渉を開始することになる。この交渉はユンケル氏やキャメロン氏のような政治家が行うが、補佐するのは選挙で選ばれたわけでもない官僚たちだ。いやちょっと待て、それはまさに、離脱主義者が嫌っていたことではないのか?

既に言ったように、これはまったくもって望ましくない決着だ。

 

原文: You Couldn't Make It Up


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