研修医の交渉

公開されました: 1 11 , 2016
投稿者: スティーブン・ホワイト

研修医と英国政府の間で大きな労働争議が進行してる。ミレニアル世代(1983年以降に生まれた世代)がどのように交渉するのか、ミレニアル世代の気質が交渉に影響をおよぼすのかを分析するには格好の素材だ。

英国外に住む方のために説明すると「研修医」とはメディカルスクールを卒業してから「専門医」の認定を貰うまでの間の医師を指す。一般的に医師はキャリアの最初の10年間を研修医として過ごす。現在研修医の数は約55,000人であり、イングランドの医療制度の中で重要な役割を担っている(この労働争議はイングランドのものであり、スコットランドとウェールズの研修医には関係がない)。2012年、医療機関が研修医の雇用条件を変更したいと発表した時に労働争議が始まった。以来間欠的に交渉がおこなわれてきたが、この月曜日には双方は決裂、医師の労働組合(BMA)は今月下旬のストライキを通告した。

いくつかの問題を先に論じておこう。まず、研修医は大部分がミレニアル世代だが、そうでない世代も多い。彼らはミレニアル世代よりも年長であり、ジェネレーションX世代に属している。例えばBMAの研修医委員会を見るに、委員長のジョアン・マラワナは1980年生まれだ。とはいっても、交渉担当者のアーロン・ボルボラやメディア担当のヤニス・グトソヤニスはミレニアル世代だが。第二に、研修医委員会は年上のBMAメンバー(たとえばBNAの議長であり1962年生まれのマーク・ポーター)から助言を受けている可能性がある。

まず交渉課題について。ミレニアル世代は医療の社会的意義や責任に声高に言及してきた。このような行動はミレニアル世代の特徴と考えられている。彼らの行動を見ると、患者の安全性や公正な医療を実現することが彼らにとっての交渉のモチベーションと考えがちだ。安全性や公正さはメディアで何度も取り上げられているものの、実のところ論点はお金だ。医療機関は基本給の大幅な引き上げ(11%)を提示し、引き換えに夜勤と週末勤務の給与引き下げを提案している。組合は「この提案が実施されれば研修医の大部分は収入減に直結する」と主張している。医療機関側は、新しい給与制度のもとでは研修医の1%のみが収入減になること、また、現在既に研修医の地位にある医師には収入減にならないよう一時給与を支給する(将来の研修医には支給しない)と提案している。もう一つ大きな問題は経験年次による昇給の廃止だ。医療機関側は年次による昇給ではなく、研修目標に対する習熟度によって昇給すべきと考えており、研修を完遂しなかったり試験に不合格になった場合は降給するしくみを提案している。

次に交渉の手法について。ミレニアル世代はテクノロジーによるコミュニケーションを活用し、また依拠している。この世代は「コネクテッド」な世代だ。フェースブックやツイッターを通して人々を蜂起させてゆく力を忘れてはならない。2015年11月、ストライキを実施するかどうかが投票に諮られた際にこの力はいかんなく発揮された。英国の法律ではストライキを実行に移すためにには組合員の四分の三が投票で賛成しなくてはならない。この時は99%が賛成に票を投じた。常に最新の動向が提供され進展が常に明らかにされており、リーダーが駆使するソーシャルメディアを通して「オン・メッセージ」な状態に居る。1966年生まれの保健省大臣ジェレミー・ハントのもと、1972年生まれのダニー・モータイマーが指揮している英国の医療機関側よりも、この点はずっと巧みだ。現労働党党首のジェレミー・コービンが労働党の議員たちの反対に関わらず大きな政策変更を実現できたもも同じ理由だ。彼は若い党員から力強い支持を受けた。その多くはミレニアル世代であり、彼の選挙キャンペーンの支持者たちだった。そしてまた、ミレニアル世代は等身大であることを好み、嘘くささを忌み嫌う。ジェレミー・コバインが支持され、ジェレミー・ハントに冷淡な態度を取るのはそのためだ。

最後に争議の結果について。もちろん今現在結果がどのようになるかは分からない。しかしながら、労働争議はいつかは決着する。ミレニアル世代の特質は価値観としての実利主事だ。個人的には、労働組合の優先順位(=お金)を満たすものが得られるのであれば、妥結に至る時間は長くないと予測している。

年長の人間は交渉に際し、上で述べたようなミレニアル世代の特徴を念頭に置く必要がある。さもなければ自分を不利な場所に追いやり、不満足な妥結や更なる労働争議に結びつくだろう。

 

原文: The Traitment of Junior Doctors


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