尊厳と不同意

公開されました: 6 27 , 2016
投稿者: デビット・バニスター

英国議会の若い女性議員が生まれ育った選挙区の路上で殺害された。国全体が激しい衝撃を受けてからからわずか2日後にこのブログを書いている。ジョー・コックス議員はブレない人間であり、誰からも愛され、尊敬されていた。彼女の選挙区は文化的に多様であり、そこに住む人々は様々な宗教を信仰しているが、誰もが彼女の死に深い悲しみと哀悼の意を示している。

痛ましい事件の直後から日が浅いが、コックス議員には多くの追悼の言葉が寄せられている。その中で、私が心を打たれたのは次の言葉だ。ジョー・コックスは、議員の地位を得る前には、国際的な人道支援団体OxFamを拠点として、世界中の数知れない紛争地を訪れ、支援活動を展開してきた。彼女は難民問題の活動家としては大胆不敵だった。私の心の琴線に触れたのは次の言葉だ。「ジョーは、悪い後味を残すことなく同意しないことが出来た」何か強い感情を持っていることについて、こういうことが出来る人は多くない。

この素晴らしい献辞を聞いた時、新聞で読んだイングランド国教会の教会会議(全世界の教会が関与する高レベルの意思決定会議)を思い出した。英国国教会は近年、伝統的な教義を現代社会の出来事や文化の変遷に照らして見直している。その過程で多くの合意不能な事柄があらわになり、国教会は引き裂かれつつある。現在問題になっているのは同性愛についてであり、特にゲイの結婚だ。英国国教会は原則としてゲイの結婚を認めないが、教会内の意見は、容認から絶対否定まで幅広く分布している。

きたるべき宗教会議における論議のために、国教会の主催者たちは短い文章を発表した。題して「尊厳と対話 - 困難な課題についての論議」、www.churchofengland.orgで読むことが出来る。この文章は、「ディベートと対話」の違いについて述べている。スコットワークでは「論議と交渉のための対話」という用語を使う。我々にはこの2つは同じものだ。「尊厳と対話」は、意見の相違を放置した状態は我々を分断し、破壊し、個人と社会全体の健康にとって有害と指摘する。また、意見の相違を放置した状態は、我々がお互いに既に合意していることさえも覆い隠してしまう。意見の相違には様々なレベルがある。我々は忘れがちだが、意見の不一致はそこかしこにあれど、合意できることも数知れずある。「対話」とは体系的な形での会話であり、人々がお互いに理解し合うことを体系的に進め、他者の言葉に正直にオープンに答え、仮に同意できないにせよ、他者の言葉を大切にすることと定義する。対話を行うためには常に意図しなければならない。お互いを尊重し、意見の相違と同時に共有できるものについても忘れてはなくてはならない。私はこの文章の内容を自分の言葉で要約してお伝えしているが伝えたいことは分かっていただけるだろう。特に心に残るのは「我々が『勝ち』を求める時、誰もが持つ人間性は顧みられない」というものだ。論議では、自分たちが「正しい」と証明するために、あらゆる手を動員する。結果として、例えば個人攻撃に結びつく。論議の内容にケチをつけ、事実や証拠を選択的に使うこともある。

この文章は、対話について、更に幾つかのことを説明している。その中でもハイライトは以下の様なものだ。対話においては、人は協調的に相互理解を作り出し、視野を広げ、お互いが依って立つ仮説を検証し、常に内省を促し、人々を動かしているニーズや関心、価値感を探り、共通性と他者のポジションに光をあてて、他者と共有された確固たるものに基づいて進んでゆく。論争は、真逆のことをする。他者に心を閉ざし、相手の主張の欠点や弱さを露わにする。

「尊厳と対話」は短い読みやすい文章だ。この文章の目的は、国教会が目前に控えている難しい論議で無意な対立を避けることだろう。だが、この文章で述べられている根本的な考え方や提案は、我々が日々の対立不一致に向き合う際に、多くのことを教えてくれる。論議が始まった時に存在した根本原因を置き去りにすることなく、他者を理解し、合意できることを探し、「共有された強さ」を見つけることは、お互いが同意できない状況下では、大いなる困難だ。

ジョー・コックスは、論争の源となった根本原因を捨てることなく、同時に「相手に悪い後味を残さずに同意しない」ことを教えてくれた。我々は常に彼女の振る舞いを手本とするべきだ。意思と目的の旅の途中で強引に断ち切らられた彼女の人生に対して、これを献辞としたい。

原文: Disagreeing with Grace


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