鏡の中のMr.ビーン

公開されました: 7 04 , 2016
投稿者: スティーブン・ホワイト

「ブレクジットについて、何か仕事をしているの?」90歳の母親が私に問う。「何でそう思うの?」と私は尋ねる。「金曜日の朝から、ニュース番組はずっと交渉と言っているのよ」と母は答えた。

なるほど。テレサ・メイ内相とマイケル・ファロン国防相が次の首相を競い合い、労働党のトム・ワトソン議員とアンジェラ・イーグル議員は次の野党党首に指名されてしまうことを避けるべく暗躍し、スコットランド首相のニコラ・スタージョンはブリュッセルで交渉相手を必死に探し続けている(この状況なら誰でもそうするだろう)。だが、一番重要なのは、一度EU離脱を通知したら即座に、英国政府は27の構成国と交渉を始めなくてはならない、という点だ。先週木曜日の投票の結果として無数の交渉をおこなう必要性が生まれた。これを見て、交渉トレーニングと交渉コンサルティングに対するニーズが高まったと思われるかもしれない。交渉が何年も長引いて我が国の未来の繁栄に影を落とすことが無いように、交渉のスピードを上げ、不確実性を排除することが、これまでにも増して重要だなのだから。

残念ながら、交渉トレーニングとコンサルティングのニーズは今後もそれほど高まらないだろう。Brexit交渉という厄介な仕事の大部分は官僚がおこなうことになる。官僚は交渉トレーニングや交渉コンサルティングは自分たちには必要ないと考えている。本当のところ、あらゆる証拠は真逆であることを示しているにも関わらず。カナダがEUとの交易条約を締結するのに8年間かかったのはなぜだろうか?ノルウェーが単一市場に入り込むあらゆるコストを負担した挙句に、一つも議席を得られないままに交渉を締結してしまった理由は?かつてはヨーロッパの金融センターだったスイスが、驚いたことに単一市場の金融サービスに完全なアクセスを達成できないままに加盟交渉を妥結してしまったのはなぜなのか。トルコが35のEU加盟条件のうちの一つを批准するために20年以上かかった理由は?これらのプロジェクトに何年も関わってきた公務員に尋ねてみたい。高額な給与と豪華な職務特典を享受してきた彼らに。

私は英国の上級国家公務員には一目置いている。大学では彼らの成績はトップクラスだった。お互いに強いコネクションで結ばれており、彼らのコネクションで辿りつけない人は居ないというほどだ。職業人生を通してずっと政府職員だった人がほとんどだ。とても賢く、よく勉強しており、最新の理論にも精通している。だがストリート・スマートかと言えば、Mr.ビーンと同程度だろう。心配すべきなのは、彼らが自分自身の特質についてあまり認識していない、という点。ストリート・スマートになるためのトレーニングを彼らはあまり気にかけない。自分たちはそんなトレーニングは必要としない、というわけだ。

これは甘いと言わざるを得ない。EU脱出キャンペーンが官僚たちの手を借りたものであることは疑いもない。このキャンペーンは経済、とくに対ヨーロッパ諸国の貿易赤字に集中している。英国がEUに対してモノを売るよりもEUのほうが英国にたくさんモノを売っている、というわけだ。ドイツとフランスの自動車産業は、UKで販売される自動車の数を削減するために関税を高くしたら、結果として労働者の削減に着手すると言っている。そしてドイツもフランスも選挙を控えており、労働人口の削減に結びつく可能性がある場所では貿易交渉をしたくないだろう。

だから、離脱を主導してきた保守党のボリス・ジョンソン上院議員とその仲間は、交易条件の交渉はすぐに終わると考えている。現実にはEUの政治家は、自分の利益には常に本気で当たってくる。上に述べた理由で関税を上げることが好ましくないなら、彼らは別の見返りを求めてくるだろう。英国にとってはコストであり、彼らにとっては価値のある何かを。言い換えれば、EUの政治家たちはストリート・スマートに交渉してくるだろう。英国が現状維持を抜けだしたことに衝撃を受けたからでもなく、脱退をちらつかせている他のメンバーに「クラブ」に留まることが意義があると見せつけるためでもない。政治家たちはパワー・プレイの本質を理解している。時間という変数を柔軟に使えること、自分たちがUKに対して与えるあらゆる譲歩から価値を引き出すためにクリエイティブになること。新聞のヘッドラインを賑わしている事柄を実際の条約としてゆく官僚たちは、相当の汗を流す必要に迫られるだろう。先に控えている交渉は、遅々として進まず、激しいものであり、不愉快で、ストレートに進むことなどまずないだろう。

UKにとって唯一の救いは、EU官僚の大部分はUKの官僚と同じくらいに浮世離れしている、という点だ。鏡に映る自分の姿をしっかりと見つめなおして欲しい。もし鏡の向こうからMr.ビーンが見返してくるなら、ストリート・スマートの専門家からのアドバイスを貰おうという気持ちになるかもしれない。スコットワークのような。

といういうことなんだよ、ママ。

 

原文: As Smart as Mr Bean


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