ゼップ·ブラッター

公開されました: 6 11 , 2015
投稿者: スティーブン・ホワイト

バスターミナルで、とある女性が、これ以上誰も乗れないほどに満員になったバスに乗りこもうとしている。乗客は彼女の前に立ちふさがり、止めようとする。彼女は「私はこのバスに乗らなくちゃならないのよ」と言う。「なぜなんだよ」と乗客。「みんな並んでバスを待って乗ったんだ。あなたが特別扱いされなきゃいけない理由なんて無いだろ?」「私はこのバスの運転手なのよ」と彼女。

2週間前、ゼップ·ブラッターは「バスの運転手」としてバスに留まる権利を行使しようとしていた。乗客は彼が運転席に留まることに大いなる不安を覚えているだろうが。彼は大きな圧力を受け続けており、FIFA大聖堂は目の前で崩壊しつつある。今この記事を書いている時点でのニュースによると、2026年の候補地選定は中止されているという。2018年と2022年の候補地選定で不法があった可能性がみつかっている。ブラッターは今年いっぱいはバスの運転手席に留まれると考えいるようだが、もしこれ以上の不祥事が明らかになれば、保ってあと数日か数ヶ月かだろう。

ブラッターは、17年間にわたる会長職職を通して、自身はFIFAの欠かすことの出来ない顔であると考えている。ひょっとするとその前からそう考えていたのかもしれない。FIFAをめぐる贈収賄と汚職のニュースがメディアに現れはじめたのは5年以上前だった。悪いニュースが時とともに抑えきれなくなってゆくことをプラッターは認識すべきだった。なにしろ彼自身がニュースの中心なのだから。そのような事象が起こり始めた時こそ、誰か経歴に傷のない人物、問題を把握して解決しようと立ち向かえる人物に道を譲るべきだった。ところが、プラッターは自分が中心に居ないFIFAなど思い描くことすらできなかった。彼自身の個人的理由なのかFIFAの組織的な理由なのかは分からないが。結果、彼は留まるべき期間を超えて留まり、今ではバスの車輪が外れはじめている。

9ヶ月前、我々はとあるグローバルビジネスの入札に参加することになった。RFPの最初の機械的なプロセスを通過するために、私は陣頭指揮をとった。そののち、クライアントが真に望んでいるものや、当社がクライアントの真のニーズにどのように答えられるのか、少しずつ知りながら歩を進めた。私は知の神託者のようだった。クライアンからだろうと同僚からだろうと、いかなる質問にも答えることが出来た。このプロジェクトは私の人生の一部になった。このプロジェクトを受注することが、人生のゴールといっても過言ではなくなった!

ショート・ショートリスト(訳注:数社まで絞りこまれた候補企業のリスト)に勝ち残り、顧客プレゼンテーションをおこなうミーティングまで進むことが出来た。そして、不承不承に、顧客プレゼンテーションには、私は適切な人物ではないと結論を出した。業界の知識、顧客の年齢プロフィール、企業文化など多数の理由による。私は降りることにした。クライアントのプロフィールを考えて社内チームを編成し、プレゼンテーションのための十分なブリーフィングをおこなった。率直に申し上げよう。プレゼンテーションの場に居られないという事実は、私にとっては傷心の出来事だ。だが私はバスを降りなくてはならないこと、新しい運転手が必要なことは、よく分かっていた。自分たちが目的地に到着したいのであれば。

まだ多少の細部が残っているものの、我々はこのビジネスを受注したようだ。競合プレゼンテーションを主導したチームは素晴らしい仕事をやり遂げてくれた。自分がチームを主導しなくてはと正当化するのはわけない事だったろう。だが、そのような正当化は、選定プロセスの終焉の鐘でもある。冷静に考えれば、私はこのプロセスの中で欠かすことの出来ない人間ではなかった。それはすぐに分かったのだけれど、にもかかわらず、チームを離れることは苦痛であり、留まったほうが良いのだと正当化することのほうがずっと簡単だったろう。

高い地位に有る交渉者はゼップ·ブラッターと同じミスを犯すことが多い。「やりかけた仕事を完遂するまで地位に留まる」という考えは立派なものだが、自分が留まることで問題をにっちもさっちも行かないものにしてしまうのなら馬鹿げている。例を上げれば枚挙にいとまがない。巨大なエゴとエゴのぶつかり合いや、のっぴきならない利益相反が明らかになる場合などだ。したがって交渉者は常に、自身の能力と、良き合意を作り出すための組織のニーズのバランスをチェックしなくてはならない。正面からリーダーシップを発揮することのみがリーダーシップを発揮する唯一の方法ではない。時として、組織の利益のために、交渉者は自ら進んでスポットライトから歩み去る必要がある。

ゼップ·ブラッターはFIFAの疑惑についての責任がある。彼がやったこと、やらなかったことの全てに、彼は応えなくてはならない。だが、彼がいつ身を引くべきだったか、見極めることが本当に難しい。その点について、私は彼に同情を禁じ得ない。

原文:  Why Sepp Blatter Has My Sympathy


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