テロリストとの交渉

公開されました: 11 23 , 2015
投稿者: ロビン・コープランド スティーブン・ホワイト

「先人の過ちから学ばない人々は、先人の過ちを繰り返す運命にある」哲学者にして詩人ジョージ・サンタヤーナの格言だ。この言葉には必然性がある。我々は過去の成功体験をあてはめて今日の問題に向き合う。では、アイルランドとの和平交渉における交渉アプローチをあてはめて現在進行中の中東での紛争を交渉し合意したり、11月13日に発生したパリの大虐殺を止めることは出来ただろうか?

IRAは数十年にわたってアイルランドに恐怖を植え付けるためにテロ攻撃をおこなってきた。IRAのテロ攻撃は英国政府を交渉の席に就かせることが目的だった。彼らは非情だったが、近い将来発生する爆弾テロについて、少なくとも事前に電話で知らせてきた。関係者は強烈に否定したものの、実際には英国政府とIRA高官の間で一連の「厄介事(北アイルランド紛争の俗語)」についての「バックドア交渉」が持たれていた。対話のチャンネルは常に維持されており、ついにはベルファスト和平合意が成立した。現在でも細かいいざこざは続いているものの、停戦は守られている。

興味深いことに、和平を成し遂げたのは戦争によってではなく、むしろその逆に、和平が戦争を止めた。和平合意とそれに続く交渉では、双方の強硬派は悔し涙を流しただろうが、多くの譲歩が実現した。これらの譲歩のうちいくつかは紛争の原因に深く楔を打ち込むものだった。ひとつだけ確実なのは、和平を成し遂げるためには寛容さと度量が必要、ということだ。

連合軍が第一次世界大戦の終結にあたり(この終戦は全ての戦争を終わらせるはずだった)ヴェルサイユ条約が締結され、ドイツは自国と連邦国が大戦により被った全損害に責任を求められた。この条項(231条)は後日、戦争賠償規定として知られるようになる。賠償金は1320億マルクであり、今日の貨幣価値では4420億ドルとなる。ジョン・メイナード・ケインズは、賠償金は度が過ぎており条約はあまりにも過酷と述べた。彼はこの講和を「カルタゴの平和」と呼んだ。結果はどうだった?19世紀から20世紀にかけてのナチスの台頭と、それに続く第二次世界大戦だ。ケインズはおおむね正しかった。

21世紀はドラマチックに始まった。数百年後の歴史家が21世紀を後知恵でいかに語るのかを敢えて想像するに「暗黒と絶望の黄金期」とでも呼ぶことだろう。世界の大部分は飢餓に苦しみ、ごく一部の人たちに富が集中する。富の偏在は想像や迷信の域さえ超えている。宗教は市井の人々の生活をあらわしていると思われているが、この影で偏在した富は巧みに姿を仮装して身を隠している。いわゆる文明世界は湾岸と中東でいつくかの軍事行動をおこなった。文明社会は勝利し、結果としてサダム・フセインやアンマル・アル=カッザーフィーなど数名の「悪者」を排除することができた。全てめでたく丸く収まり、文明社会の日常は続いてゆく。日々の生活が破壊された人々を除いては、こんな形での決着を望んでいない人たちを除いては。その人達が抱えこんだ真空は、何かで満たさなくてはならない。ISISがその真空を満たした。

現実社会において、ISISと交渉することは、ジハーディ・ジョンを逮捕して法の裁きにかけるのと同じくらい有りそうにない。労働党党首ジェレミー・コービンは以前そうしようと主張していたが。それにしても、暴力やテロは、交渉というアプローチの実現可能性にどのような影響を及ぼすだろうか?ISISは西側諸国を交渉のテーブルに就かせるためにテロをおこなっているのだろうか?ISISの拠点を爆撃すれば彼らを交渉のテーブルに就かせることができるだろうか?もしそうでないのなら、爆撃で彼らを根絶やしにするか、あるいは彼らが何処かに好き勝手に逃げおおせることのみが、可能な路なのだろうか。ISISやヒズボラ、ハマス、アルカイダ、アルヌスラなど同種の過激派組織は、西側諸国で十分な犠牲者を出したので交渉したいと言ってくるのだろうか?

アイルランドの和平協定と中東情勢は、民族性に根ざした文化が異なっているという点を指摘したい。宗教こそ異にするものの、アイルランドの紛争当事者と英国は西洋文明の文脈を共有していた。テロリズムの当事者である中東の人たちと我々の間に横たわる溝は恐ろしく深く、同じ交渉のテーブルに座ることなど無いという点は理解しておく必要がある。「交渉のテーブルに就く」という考え方はISISには存在しない。シリア、イスラエル、リビア、ナイジェリアの紛争を「外交的に」解決しようとするリベラル志向のインテリ層は欺かれることになるだろう。

我々は我々の流儀で考えるし、ISISはISISの流儀で考える。ひょっとすると、何か分かち合えるものはあるかもしれないが。

 

原文: No Discussion, Just Death


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