良き人でありたい

公開されました: 5 21 , 2015
投稿者: スティーブン・ホワイト

 最近のニューヨーク·タイムズ紙に掲載されたとある記事は、交渉について考えさせられる内容だった。「マーケットが機能しない状況で人々の行動を変えるためには、どのようにしたら良いだろうか?」という問いだ。

記事はカルフォルニア州の慢性的な水不足についてのものだった。水不足は深刻化しており、水使用量の削減を義務付ける規制が4月1日に実施された。ゴルフコースや墓地のスプリンクラー使用を制限し、乾燥に強い芝生に植え替えることを奨励するなど、規制は社会生活上の水の使い方に関するものがほとんどだ。庭の水遣り機材を買い換えるための補助金が支給され、住民は水を節約するよう推奨される。新築の家には最初から厳しい規制がかけられる。

さらには、住民が自主的に水節約の義務をはたすために、庭への水遣りの頻度を減らすよう推奨されている。だがこの推奨はうまくゆかないだろう。カルフォルニアに住む人々がこんな節約行動にモチベーションを感じるとは思えない。教科書的なアプローチをとるなら水の価格を上昇させて、市民が義務に従うことが経済的に理にかなう形とすればよい。だが、陽光溢れるカルフォルニア州のガーデニング愛好家たちは、芝生に強すぎるほどの愛着を覚えている。月に何ドルか水道代金が高くなったところで、水の使い方を改めることはしないだろう。

水節約の義務を果たした市民への見返りとして興味深いアイデアが検討されいている。これはあまりお金がかからない方法だ。次のように書かれた看板を無償で配布するのだという。「カルフォルニアを救うために、当宅の芝生は枯れています」もちろん、この看板を掲げることができるのは、本当に芝生が黄色く枯れている家だけだ!

この記事を読んだ時、大手旅行代理店トーマス・クックの事件を思い出した。9年前、ギリシャ・コルフ島のホテルで2人の子供が一酸化炭素中毒で亡くなるという痛ましい事故があった。 トーマス・クックがこの旅行をパッケージツアーとして手配していた。事故を起こしたホテルは大手ホテルチェーンではない独立経営のホテルだった。2010年、コルフ島の裁判所において判決がくださた。子供たちの死に対する倍賞として約70万ポンドが、また、 トーマス・クックが事件を通して被った被害に対して350万ポンドの支払いがホテルに命令された。ところが、過去数週間にわたり英国で行われた審問の中で、陪審は トーマス・クックが注意義務を怠っていたことを発見した。彼らははホテル側が提出してきた安全保障を鵜呑みにし、老朽化して危険なボイラー設備を自ら点検する義務を怠っていた。

5年前にホテルが両親とトーマス・クックに賠償金を支払ったことは別段秘密ではなかった。もしもトーマス・クックに何らかの良識があれば、彼らが得た賠償金は公平なものではなかったし、両親は更なる補償を受け取るべきだったと認識したことだろう。残念ながら会社はそのような認識を持っておらず、また、この大手旅行代理店に変化を促すマーケットの力もなかった。

この状況が一変したのは、ネットを通して市井の人々がパワーを手にした時だ。トーマス・クックに対するネガティブキャンペーンと、その結果としての株価の低迷に押されて、会社は不承不承で謝罪をおこない、150万ポンドをユニセフに寄付すると申し出た。

この2つの事例のいずれも、隣人や仲間に「自分を良き人間と見せたい」という人間としての根源的な願望がモチベーションとなっている。その底にある理由は、虚栄心や自己肯定感を満たしたいというものかもしれないし、ビジネス上の必要に迫られてのことかもしれない。理由がどうであれ、「自分を良き人間と見せたい」という願望は、モチベーションになりうるようだ。

交渉者にとっての教訓は?支払遅延のペナルティが契約に含まれているにもかからわず、いつも支払いが遅れる顧客、契約で厳しい罰則が決められているにも関わらず納期を守らないサプライヤー。このような人達を相手にする場合、既存の制約を外して考え無くてはならない。金銭的なペナルティが彼らの行動を変えないのなら、彼らの問題行動を変えるために「周囲から良き人間と見られたい」というニーズを刺激することはできないだろうか?

原文: Looking Good


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