誰がデッドロックを起こすのか

公開されました: 6 18 , 2015
投稿者: スティーブン・ホワイト

ギリシャ経済危機という名の連続小説では、これまで無数の「期限」が設定されてきた。これからも次から次へと設定されてゆくだろう。これまで設定されてきた「期限」はあまりに多かったので、もはや期限など何の意味も持つまい。

ここ数日にわたるメディアの論調を見るに、危機は本当に近づいているのかもしれない。ギリシャは巨額の負債―16億ユーロ―を6月30日までにIMFに返済しなくてはならず、国庫にはそんなお金は無い。ギリシャが債務不履行に陥る可能性は現実のものとなり、結果としてギリシャがユーロ圏から離脱するのではないかと言われている。数多の当事者間の論議は頓挫していると呼ぶにふさわしい状況だ。交渉が一筋縄ではゆかないことは最初から明らかだった。これは教科書的な多者間交渉であり、連立しているギリシャの複数の政党、IMF、ヨーロッパ中央銀行、EU、甚大な金額を手にするか失うかを賭けた投機家たちが関与している。巨大なエゴの持ち主たちが「勝ち」を掴もうと固い決意のもとに睨み合っており、既得権益を手にした人達が主導権を握っている。結果今では交渉はデッドロックに陥っているように見える。デッドロックは、交渉を再開して決着に至るには時間切れとなるまで続くだろう。

個人的にはメルトダウンに至る破滅シナリオが発生するとは思えない。これまでに「危機的状況」が何度も発生しては通り過ぎて行った。今回もまた同じ繰り返しだろう。デッドロックはやがて終わる。将来、もう少し真摯な対話を通して、もしくは期限前に交渉が再開されることによって、もしくは返済期日を繰り延べることによって。経験豊富な交渉者は知っていることだが、仮にデッドロックが解消されたとしても、根源にある問題が解決されたということではない。頑なな態度を捨てて、交渉に向きあうようになるまでは、根源にある問題は触れられることもない。

デッドロックは興味深い現象だ。二者もしくはそれ以上の当事者が非妥協的な態度をとることによって生じる膠着状態と定義される。これはつまり、双方の非妥協的な態度こそがデッドロックの源泉であって、どちらか一方のみが引きおこしているわけではない、ということだ。通常我々はデッドロックの原因をそのようには見ない。ファイナンシャル・タイムズは6月17日「ギリシャ危機による国債市場の混乱をうけて、債権者は緊急プランを策定中」という記事を掲載し、ギリシャこそが混乱を引き起こした当事者と名指ししている。これに対し、ギリシャのビジネス誌Naftemporikiは、期せずして同じ日の記事で「歓喜の狂乱からデッドロックへ、政府とパートナーの交渉は不調」と報じている。この記事では、ギリシャ政府はデッドロックを引き起こした唯一の犯人ではなく、交渉相手全員が等しく失敗を犯してきた結果だと主張している。

 私が問いたいのは以下の疑問だ。もしも2者(もしくはそれ以上)の当事者がお互いに「一切妥協せず」の態度を貫いているとしたら、両者は常に等しく非難をうけるべきだろうか?どちらか一方がスタンスを変えて交渉を再開することはできる。それはどちらかが降伏するという意味ではない。これまでとは違うものの見方を取り入れたのかもしれないし、新しい変数を持ち込んだのかもしれないし、MUSTであった目標を見直したからかもしれない。ところが今回の連続小説では、主な登場人物は誰一人としてこのような行動は取らなかった。ひょっとすると参加者全員はチキンゲームの信奉者かもれない。相手が失うものが多いのだから相手が先に瞬きするはずだ、というものだ。

二人兄弟の兄として、私はよく弟と喧嘩をした。弟は私よりも喧嘩が強かったが痩せており、私はぽっちゃりしていた。私は体重のおかげで勝つことが多かった。兄弟に与えられた玩具をどちらが使うかについて「非妥協的な」衝突が起こった時(電車の玩具については特に争いが多かった)、弟は負けることが多く、母親に兄のフェアではない行動を是正するよう訴えることが多かった。母親の言葉はいつも変わらなかった。「もしも相手が悪いと思ったら、それを正すのはあなたの責任なのよ、もしあなたが自分で正すことができないなら、悪いのはあなた自身なの」なるほど、しかしここで言う「あなた」とは誰のことなのだろう? 

社会に出て働くようになってから「あなた」とは「自分自身」なのだということが分かった!不均衡でフェアではない状況に居ようと、自分が負け犬だろうとパワーバランスで勝っていようと、他者の行動を絶対確実に変えることなど出来ない。変化が必要なら、自分から始めなくてはならない。

ギリシャをめぐる悲劇の当事者たちは、私の母の言葉に耳を傾ける必要があるだろう。

 

ちなみに、弟と私はいまでは仲良くやっている。:-)

 

原文: It's Always My Fault


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