ギリシャ交渉戦略のミス

公開されました: 2 19 , 2015
投稿者: ヤニス・ディマルキス

この文章を書いている最中にもギリシャ政府とユーログループ(ユーロ圏財務相会議)の交渉が進んでいる。最終決着はまだ分からないし暫くの間は分からないだろうが、ギリシャは状況に対処する際にいくつかのミスを犯したことがはっきりとしている。この記事では、その中から3つを選んで紹介することとする。

政権樹立の瞬間からギリシャ新政権はユーログループやそのキーパーソンに対して敵対的なスタンスを取り続けている。一例として総選挙からわずか4日後、ユーログループのユルン・デイセルブルーム議長とのミーティングにおいて、ヤニス・バルファキス新財務相は、デイセルブルーム議長が前政権とおこなってきた協議を侮辱する声明を発表した。これとは別に、先週、日刊紙Avgi(政府の広報誌と見做されている)は、ドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相にナチスの制服を着せた風刺画を掲載した。アレクシス・チプラス首相は数日後に謝罪をしたが、ダメージは既に広がっている。これ以外にもいくらでも例を挙げることはできるが、この2つは顕著な例だ。

経験豊富な交渉者はだれでも、難しい交渉の入り口では対話のチャネルを出来るだけ広く持っておく必要性を理解している。協調的なスタイルを取れば対話のチャネルを広くとれる可能性が増える。逆に現在のギリシャ政府のように敵対的なスタンスをとれば、相手を苛立たせるだけだ。

ヨーロッパ各国を訪問した結果、先週水曜日(2月11日)には、バルファキス財務相はユーログループの同僚に提案を提示する機会を手に入れた。その会合では出席者はギリシャの提案に熱心に耳を傾け、前に進もうという雰囲気もあった。にも関わらず、バルファキスはEUのマイクロエコノミクスの講義をおこなっただけだった。会議が短い時間で終わったのも当然だ。ギリシャが最大の機会を逸した瞬間だった。信頼できる現実的な提案を示し、今後に向けてのアジェンダを設定し、不利なパワーバランスから抜け出す機会だったのだが。

それはそれとしても(もちろん手痛い失敗だった)、ギリシャ首相が翌週の欧州理事会の会合でフォローすることが出来たはずだ。実際には首相は何ら提案を示すこともなく、他国の首脳陣に丁重に自己紹介をしだだけだった。こうして第2のチャンスもモノに出来ずに終わった。

今週(2月16日)、別のユーログループ会合が開催された。バルファキスはもう一度講義をおこなったが、ギリシャからの提案は何一つなかった。デイセルブルーム議長はこの欠落を埋めるために、とある書簡(つまり提案)を上程したが(当たり前だが)内容はギリシャが期待するものとは程遠いものだった。その時には別の会議も進行中であり、ご想像の通りこちらも長くはかからなかった。バルファキス財務相は「フランスのモスコヴィッチ財務相が提出した書簡があり、そちらなら自分は喜んでサインする」と説明した...第3のチャンスも失われた。

どんなに興味深い論議や理論だろうと、そこに貴重な時間を費やしてしまえば交渉のプロセスは進まない。逆に現実的で意味のある提案をおこなえばプロセスは前に進み、交渉が依って立つ肥沃な土壌を作ることが出来る。

2月16日のユーログループ会合の後には交渉はある種の膠着状態と見られるようになった。交渉がデッドロックに陥れば、デッドロックは常に強い側を利する。ギリシャが財政規律を取り戻すためにEUと何らかの合意に達することは非常に重要だ。ギリシャはこの交渉では弱い側にいる。デッドロックに陥らないためにギリシャにはなすべきことがいくつもある。対話を続け、既に説明したように提案を行い、優先順位が高くない課題は譲歩し、より上位の意思決定権者と交渉し(ヤニス・ドラガサキス副首相は明らかに代替すべきだ)、議論に新たなパラメータを導入する。

パワーバランスが弱い側はデッドロックを避けなくてはならない。目的に近づくために、個別のツールや戦術がいくつもある。

ヤニス・ディマルキス
スコットワーク・ギリシャ 代表パートナー

原文: Key Errors in the Greek Negotiating Strategy 


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