交渉の筋書きを事前に緻密に描くべきか?

公開されました: 11 06 , 2014
投稿者: マイク・フリードマン

これから向き合う交渉の筋書きを描くことに多くの時間を費やしたがる人は多い。個人的にはこの手の話に出くわすたびに心の中で「やれやれ…」と毒づいている。

交渉とは対立不一致に向き合う手段なので、交渉には常にストレスが付きまとう。準備の段階から様々な手法を使って自分の周囲に防護壁を巡らせたくなる。そうすれば自分たちにはパワーがあると思えるし、多少は安心することが出来る。例えば、事前に交渉の流れを完全に辿る形での準備を好む人達が居る。交渉戦術は長い筋書きになり、自分や相手が言うべきこと、なすべきことについて、複雑な流れが構築される。

ところが、どんな交渉でも絶対確実に断言できることが一つだけある。「交渉は、ほぼ例外なく、事前に予測したとおりに進まない」という点だ。

精緻に描いた筋書きは、交渉が始まった途端に「昔々の物語」になる。

「筋書きを精緻に重ねる形での準備に、何かまずい点があるのか?」と疑問を感じるかもしれない。あらかじめ筋書きを立てておけば、全部とは言わないまでも多少はその通りに進む部分もあるだろうし役に立つ部分もあるのではないか?

実際のところ「まずい点」は、かなり大きいと言わざるを得ない。緻密に筋書きを描けば(つまり自分たちは全ての情況を完全に検討し尽くしていると思い込むほどに)「その筋書き通りにことが進んでいるか」が主要な関心事になる。それより余程大事な「相手の言葉に耳を傾ける」という行動が疎かになってしまう。相手が事前の筋書き通りに進まないと判るやいなや、相手を筋書きに嵌め込もうとする試みが始まる。説得に訴え、論議は対立的になり、相手の言葉を聴かず、相手の関心には何の関係もないこちらの筋書きを進めるようになる。

もし交渉の当事者同士が、お互いが別個に描いた事前の筋書きに縛り付けられたままに交渉を進めたら、合意に至るチャンスはどれくらいあるだろうか?

事前に描いた交渉戦術が機能するためには、相手の関心事のうちどの部分がこちらの戦術によって影響を受けるのかについて、相手の見方を知らなくてはならない。相手のニーズを優先順位の高いものから順にリストアップできなくてはならない。前回の会合から情況が変化していないことを確かめなくてはならない。相手に対して何か仮定していることがあるなら、それらの仮定はすべて正しいかをチェックしなくてはならない。これらのプロセスの中で何か新しい情報が出てきたら、事前に描いた筋書きは、もはや用をなさない。

どんなに親しい関係であったとしても(結婚している場合でさえも)、完全に相互を理解していることなどない。事前の筋書きによって双方の間に線を引いてしまうよりも質問をするべきだ。相手の現在の関心事やニーズを知り、優先順位を明らかにして、自分たちが相手に持っている仮説をテストする。そこまでやって初めて、こちらがコントロールを握り、提案を行って相手のニーズに応え、相手が重要と考えるものと、こちらが求めるものを交換することになる。

「ええ、でもね…」という形での応報をしているなら、まず間違いなくあなたは相手の言葉を聞いていない。それはつまり、あなたは逃げ場のないポジションでリスクを犯している、ということでもある。説得に訴えざるをえないだろう(これは交渉ではない)。自分には解決方法があると考えているが、それはつまり相手の関心や利益を無視しているということでもある。

交渉のプロセスの本質を理解すれば、事前の緻密な筋書きなど窓から投げ捨ててしまっても、誰も非難などしない。合意に至る路の中で、事前の筋書きが障害になることのほうが多いからだ。

こちらの描いた筋書きは脇においておこう。筋書きを描くために使った準備段階の時間は、次のことに費やそう。

  • 相手のニーズごとに、相手は何を求めてくるのか、ブレーンストーミングして長いリストをつくる
  • ミーティングの前に、一連の質問を用意する

ミーティング中は、情報を得るために質問をし、相手が言っていること、相手が理解していることを明確化するために、質問をする。

もしあなたが「ええ、でもね…」と言いそうになったら、まずそれはやめよう。そのかわり、相手がさっき口にした言葉を繰り返してもらうようにお願いしてみよう。信じようと信じまいと、相手が口にしたことは場、あなたがこれから口にする言葉よりも、合意に結びつく可能性が高いのだから。

原文: Yes But... I Have a Strategy

 


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