ユニバーサリズムの世界

公開されました: 9 25 , 2014
投稿者: スティーブン・ホワイト

こんなシナリオを考えてみよう。あなたはクルマで街中を走っている。ハンドルを握っているのは同僚であり、あなたは助手席に座っている。ミーティングに間に合わせようと同僚はスピード制限を超えて運転している。そして軽微な事故を起こしてしまう。怪我人は居ない。通報されて警察がやってくる。事故を目的した通行人は、あなたの乗っていたクルマはスピード違反をしていたようだと警察に証言した。同僚はあなたに、スピード違反はしていない、と証言して欲しいと言ってきた。さて、あなたはどうするだろうか?

ユニバーサリズム(普遍主義)の世界の住人なら、この出来事を、法やルールを普遍的に適応すべき課題として捉える。仕事熱心でありミーティングに間に合わせようとしたことは一切考慮されない。法を破ったのであれば、そのあるべき結論は全ての人が例外なく受け取るべきであり、何らかの事情や、法を破るに至った理由などは関係がないと考える。

 パティキュラリズム(個別主義)に立脚する人達は、事故を起こすに至った情況や関係性を考慮べきと考える。怪我人は居ないし、同僚は通常なら優良ドライバーだし信頼できる人物だと知っている。スピード違反の証言をして違反の罰則に至れば、彼との関係にヒビを入れるかもしれない。

ユニバーサリズムとパティキュラリズムは物事の捉え方の両極端にあるが、一人ひとりがその間のどの位置にいるのかは、国や文化によって異なる。例えばイギリスやドイツはかなりユニバーサリズムの端に寄った考え方をする。イタリアやブラジル、ギリシャはパティキュラリズムの端に近い。ユーロ通貨を導入する際に条約で決められた通貨切り替え要件の解釈が国によって異なったのは、これらの差異が現れた一つの例だ。ユニバーサリズム傾向の強い国は条項の要件を全て順守することが当然と考えた(それでもいくつかの要件を達成することは出来なかったが)。パティキュラリズムの国は、要件を守ろうという意図自体はあったものの、最初から上手くゆかないとわかりきった財政ポリシーをいつまでも続けた。

交渉に関するブログ記事の中で、どうして私がこんなことを書いているかって?理由は、ビジネスの世界で交渉者が交渉を行う舞台は、年々ユニバーサリズムに支配されるようになっているからだ。交渉は法制度や組織のルールに拘束されるようになっている。誰もが法やルールには従わなくてはならない。購買部門の人達は、相見積もりなどの形で必ず「比較」をしなくてはならない、というルールに縛られていることがある。その場合、購買の仕事は「違いを比較する」に限定されてしまう。これはつまり、比類なき製品やサービスを持つサプライヤーは購買部門を通過できない、というとになる。これらは文字通り「比類がない」のだから。

ユニバーサリズムの影響について、2つほど例を挙げておこう。最近弊社がRFPにより競合プレゼンを行ったケースで、提案書提出期限前に、課題の詳細をより理解するためにミーティングをお願いした。しかしながらこの依頼は断られた。ノルウェーの法律では競争入札で特定の応札者を有利に扱うこと(その応札者とはミーティングを行い他社とはおこなわなかった)を禁じている。応札者全員に同じ情報を与え無くてはならない。結果として、この法律は、応札した全社からクライアントのニーズにクリエイティブに応える手段を奪ったことになる。

さらに最近のことだが、とあるパブリックセクターの競合入札で、クライアントは浅はかにも「それっぽいルール」を課することに決めたようだ。プロジェクトに関わるコンサルタント全員に様々な基準が課せられた。いわく、最低10年はそのポストに在籍、その領域で最低でも7年の経験、過去2年間に同じようなテーマで2つのプロジェクトの経験、など。クライアントは業者を選定する際に、最後まで一度も候補者とミーティングをしなかった。結果が知らされた後で、クライアントは選定したコンサルタントと最終面接すらしなかった、と聞かされて我々は驚いた。定められた基準は満たしていたかもしれないが、だからといってそのコンサルタントがこれから向き合うクライアントの課題に適切な人材なのか分からない。手短に言えば、そのコンサルタントは時間給だけを稼ぐバカかもしれない。この指摘に対するクライアントの返事に、我々は腰を抜かした。ミーティングは時間の無駄である、なぜならば、自分たちは「どれくらいバカか」を測る指標を持っていないから。

このいずれの例でも、結局のところ敗者はクライアントだ。ユニバーサリズムに立脚し、譲歩しうる個別の情況を顧みなかった。結果、彼らはベストの投資対効果を得ることは出来ないだろう。

交渉で必要となるのは、思考やアプローチの柔軟性、手法や制限に対するクリエイティブな取り組み、論議の対象や対象としない領域についての、イノベイティブな見方だ。ユニバーサリズムに立脚する人達は最終的には自分自身や相手を消耗させることになる。 

原典:  Universalists of the World – Beware


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