その時点でベストな計画

公開されました: 5 29 , 2014
投稿者: スティーブン・ホワイト

米国の巨大製薬会社ファイザーが、英国の巨大製薬アストラゼネカの買収を試みた。昨日まで私は、この買収は一時的な楽観主義に基づくものだと考えていた。5月上旬にこの話を初めて聞いた時、最初の提案は一株50ポンドだった。合併が成立すれば世界で最大の製薬会社が誕生することになる。この合併には2つの前提がある。まず、アストラゼネカは高収益のとれる新薬の多くがパテント期間の終わりにあり、しかもR&Dパイプラインには魅力的な新薬が無いので、アストラゼネカは弱いポジションに居る、という点、もう一つは、ファイザーにとって本社をUKに移すことで、税制上のメリットが得られる、という点である。

メディア報道からの印象としては、ファイザーは主導を握りしだい、アストラゼネカの乗っ取りに着手するように見えた。アストラゼネカは買収には断固反対しており、また英国政府も、買収後にアストラゼネカの人員削減が行われるのではという懸念が拭えないので、同じく反対している。さらに、米国政府は租税回避に懸念を示している。それでもファイザーはこの獲物を追い続けており、提案額を53.5ポンドに、ついで、「最後」案として55ポンドを提示した。アストラゼネカに最終的に1000億ドル以上の値をつけたことになる。この提案はアストラゼネカのボードミーティングによって、わずか2時間後に否決された。買収はここで終わりになった。

その後、私はロイターのベン・ヒルシャーの記事を読んだ。ロイターの記事は、この買収劇に全く異なる見方をもたらすものだった。記事はここで読める。ファイザーはこの買収を2、3ヶ月での短期で目論んだわけではなく、昨年11月、すなわち7ヶ月前から、アストラゼネカの幹部と論議を始めていた。この買収は短期間の間に繰り出されたものではなく、注意深く戦術が策定されていたのだ。双方がこの話を知るところとなって以来、アストラゼネカは交渉での防御を何ヶ月も準備することが出来た。1月にはアストラゼネカの売上が予測を上回る伸びを示すという短期予想が発表されたが、準備はその時に始まったのだろう。株価を押し上げて、狩るには高価な獲物にするためだ。

交渉の観点からは、ファイザーの戦術が失敗したように見えるのはなぜか、と考えると興味深い。ファイザーの戦術はフットボールほどの大きさのある頭脳の持ち主によって編み出されたのだろう。もちろん戦術策定者たちは、アストラゼネカのボードは反対することを知っていたし、アストラゼネカの株式を保有している機関投資家こそが本当の意思決定権者であることも知っている。提示価格が適切なら、投資家はボードに提案を受諾させただろう。アストラゼネカは、売上予測や新薬開発について学会での強気のコメントなどを通して株価を上昇させ、投資家に将来の高値期待を煽った。とある識者の見方によると、ファイザーが買収を成功させるためには、58.50ポンドまで価格をあげなくてはならないという。

結局ファイザーは値付けを誤ったと考える。最初の提案では誤っていなかったが(仮に買収が最初の段階で成功していれば、それでも高値すぎたと言われただろうが)、「最終」提案が、どう考えても低すぎたのだ。

さらに、タイミングも悪かった。ファイザーはもっと迅速に、おそらく昨年末までに、ことを進めるべきだった。そうすればアストラゼネカが使えた準備時間は短く、株価に影響を与えたPRも難しくなっていただろう。

ひょっとすると、ファイザーにとってはまだ続きがあるのかもしれない。「最終」提案をしたわけだが、証券取引所のルールによると11月にはディールを再開できるし、仮にアストラゼネカの側からの承認があれば、8月にも再開は可能という。初期段階でファイザーは低い価格を提示したが、これをきっかけにして投資家は将来株価について考えを改める可能性もある。

暫くの間、注視しておこう。

原典: Best Laid Plans


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