一つの見方として

公開されました: 1 30 , 2014
投稿者: ロビン・コープランド

彼はダマスカス大学で内科医としての教育を受けた後、ロンドンのセントメリー教育病院グループの一つであるウェスタン眼科病院で2年間、研修医としての生活を送った。1994年に兄が交通事故で亡くなるまで、政治的な野心は全くと言ってほど無かった。シリアのバッシャール・アル=アサド大統領は、自身の政治的影響力を維持することにかけては、極めて近視眼的な見方をしている。過去2年間、アサドと彼を支える政治勢力は、欧米から支持を受けたと思われる反対勢力との間で、苛烈な権力闘争を繰り広げてきた。

アサドが権力の座に就いたのは、父が亡くなった2000年だった。バアス党と陸軍の権力基盤を継承し、97%という圧倒的な支持を得て当選を果たし、2007年にも再選を果たしている。長く続いた権力の結果として、個人資産は1500億ドルと言われている。香港、ロシア、その他のオフショアに資産を分散し、リスクに備えているという。

ひょっとすると、彼が権力に固執する理由は、資産を守るためなのかもしれない。

ナイスガイだろうか?多分違うだろう。欲望の化身のような誇大妄想狂?違うかもしれないが、伝え聞く話によれば、そうであることを支持する証拠が多い。というわけで、とりあえず、彼は欲望の化身の誇大妄想狂と仮定して話を進めよう。

アサドは、好むと好まざるとにかかわらず、主権国家であるシリアの現職の大統領だ。シリア和平会議「ジュネーブ2」では、この事実が問題となった。あまりはっきりとは口にしたくないものの、(シリアの体制中枢部を除いて)誰もが、彼と彼の権力基盤が取り除かれることを望んでいる。シリアの内戦には2つの政党が関与していた。彼はそのうち一つの政党を率いており、責任ある地位に留まるものとして、国を割る論争の主要登場人物のひとりとして、本来なら法の裁きを待つべきだろう。彼は現在もバアス党のリーダーであり、然るべき時が来れば、和平会議や、それに続く交渉に関与するだろう。

別の問題もある。対立陣営の足並みが揃わず、分断されていることだ。2013年7月22日、ロシアの外務大臣セルゲイ・ラブロフは、シリア政府は付帯条件なしに対話に応じる準備があると述べた。2013年11月25日には、国連事務総長の潘基文は、シリア政府と対立陣営の両方が話し合いの場につくと述べた。ここまでは良い進展だ。

ところが2013年12月20日に和平会議に参加するリストが公表されるやいなや、反対勢力の一つである「シャームの自由人」代表のハッサン・アブドゥルは、この会議の結果には拘束されないと発言した。イスラーム戦線は対話を拒絶した。シリア国民連合は反対連合が和平会議に出席することに抗議して、反対連合から去った。一方で、シリア革命戦線とレバンドのイスラム国は対話を支持した。クルド民主連合党も会議に代表を送ることを求めた。クルド軍はシリア北部で自治区をつくっているという事実に基づいての要求だった。

結果、反対派は少数が参加しただけだった。また参加を望む陣営のなかには、控えめに言っても希薄な理由しか無い者も居る。出席者たちは、シリア政府と同じ部屋どころか同じ街にいるという事実に、不快感を感じていた。会議は二度と得難い貴重なチャンスであり、対話を通して先にすすめるかもしれない唯一無二の場だった。そのような状況では、両方の陣営が信頼できる仲介者を見つけることは非常に重要だ。国連とアラブ連盟合同のシリア特別代表を務めるラクダール・ブラヒミがこの役を務めることになり、両者に対話のチャンネルを開いた。

シリア和平会議にはもう一つの興味深い側面がある。当然この会議は国際社会の支援を通して開催された。最も興味深いのは、米国国務長官ジョン・ケリーの発言だろう。彼は「自国の人々への暴力行為を率いた人間が、自国の政権に返り咲くことなど、絶対に、絶対にあり得ない」と述べた。この言葉には私も同意するが、しかしながら、これは和平交渉の課題ではない。ケリー国務長官が理解すべきなのは、交渉の一方の当事者に受け入れがたい事前条件をつけると、交渉プロセスを助けるどころか頓挫させてしまう、ということだ。

もっとこ、それこそがこの発言の目的だったのかもしれない。ケリー国務長官の意図は次のようなものだったのかもしれない。「我々は対話を支持する。現政府と反対派陣営からなる暫定代表団に一時的に権力を移すというゴールにも同意する。両者が対話を続け、交渉による決着を探し続けることを推奨する。バッシャール・アル=アサド将軍が関与してこないかぎりは」

交渉に事前条件を付けるという戦術は、興味深い。幾つもの目的を達するために使うことが出来る。

  • 交渉の速度をおとし、途中のある場所で進展を止めてしまう
  • もしこの条件が破られれば交渉はできない、というスタンスの原理原則やポジションを定義する。「砂の上に引いた線」を想像して欲しい

この種のボジションステートメントは、事前、もしくは交渉の最初で伝えるのが良い。交渉の合意に、特定の状況や枠組みを事前に設定することが出来る。オープニングステートメントとして述べれば、受け入れ可能な合意の形を描くことが出来る。なによりも、この種のステートメントは事前にプランして練習することが出来る。

ジョン・ケリーはバカではない。アル=アサド将軍には、現役を引く際の戦術が必要だろう。アサドは自分自身を国際社会の指名手配犯としてしか見られないのかもしれない。

原典: That's One Way of Looking at It!


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