大きなことは重要だ。だが、大きくないことも等しく重要だ。
問題は最初から小さな場所に潜んでいる。皆がそれを分かっている。にもかかわらず、サインしたインクが乾いたはるか後になって問題が「発覚」するのは、なぜだろうか?
長く困難な交渉が終盤に差し掛かるにつれて、安堵に身を任せ、パブに駆け込んで一杯やりながら達成感を噛み締めたいという誘惑に駆られる。
支払いの通貨、リベートの正確なパーセンテージ、支払いに影響を及ぼす要素、などの課題は、忘れられがちになる。細かい配送手順、配送が遅れた際のペナルティなどは言うに及ばず。交渉をまとめたんだから、細かいことはいいだろう?
これらの細かい事項につての合意が欠けている、というのであれば、結局お互いは何を合意したということになるのだろうか?
フランスの国鉄SNCFが新規に導入した2000台の車両は、幅が広すぎてプラットフォームを通過できない駅が多いと「発覚」した。高い間違いだ。およそ1000のプラットフォームを回収するために、4000万ポンドが必要になったという。もちろん、これは、ちょっとした間違いや誤解、計算間違いが大問題となった史上初の例というわけではない。
計算間違いが壊滅的な結果におわった3つの例を挙げよう。
NASAの火星探査機「マーズ・クライメイト・オービター」。火星の軌道を周回し、史上初の地球外気象衛星になるはずだった。探査機は1999年に失われた。NASAのとあるチームはヤード・ポンド法で計算をしていたが、他のチームはメートル法を使っていた。1億2500万ドルの探査機は軌道投入中に火星に近づきすぎて破壊された。
ミレニアム・ブリッジ。21世紀の幕開けを祝うために、2000年6月、ロンドン市は新しい歩行者専用橋を建設した。テムズ川南岸に完成したばかりのテート・モダン・ギャラリーと北岸のセントポール寺院を結んでいる。橋の上を人が歩き出すと、350メートルの橋は、危険なほどに揺れることが明らかになった。設計者は、橋の通行者の「同期歩行振動効果」を考慮していなかった。橋が横揺れを始めると、歩行者は揺れのリズムに合わせて足を進め、意図することなく橋の振動を悪化させてしまう。
南極探検隊スコット。南極探検家のロバート・ファルコン・スコットは、1910年から1912年にかけての南極探検で、探検隊が必要とする食料について、計算間違いを犯した。一日の摂取カロリーを4500カロリーとしたが、これは高緯度地域で橇を引いているのであれば、不十分である。隊員は体力が尽きるにつれて、ゆっくりと餓死を迎えた。
時間をかけて、細かい点や仮説について、二重三重のチェックをしよう。また、合意について、あえて細い部分を話しあう時間を設けるのも良いだろう。
小さな頃、木工工作の教師の言葉を思い出す。二度測りなさい、切るのは一度だけ。
原典: Size Matters
筆者について:
アラン・スミス
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