懐疑

公開されました: 3 26 , 2014
投稿者: スティーブン・ホワイト

マレーシア航空370便が姿を消してから2週間になる。打ちひしがれた乗客の家族の姿が報じられない日はないが、次第に悲しい事実が明らかになりつつある。最新鋭のテクノロジーを用いた追跡によって、航空機が南インド洋の何もない大洋に墜落した可能性が高まりつつある。残された家族の多くはこれを信じていない。飛行機の残骸などの物的証拠が出れば話は違うかもしれないが、現在のこころ、家族や関係者は懐疑をつのらせている。

テクノロジーに基づく推論を受け入れられるのかどうかが問題なのではない。愛する家族が生きているという希望をつなぎたい感情はよく分かる。だが、乗客の家族や関係者の懐疑は、単に感情のレベルを超えている。マレーシア航空が秘密主義で情報開示が遅いこと、マレーシアと中国の政府が相互に不信感を募らせていることなどが懐疑を募らせざるを得ない原因だ。航空会社のマークが判別できる残骸が一片でも回収できれば、懐疑に満ちた見方はかなり変わるのだろうが。

これと全く同じ話がビジネスも常に起こる。今週私はとある広告業界のクライアントと話す機会があった。彼の一番の不満は、誰もが「予算がカットされた」と言い続けることだそうだ。フィーについての現実的な提案をおこなっても「予算はその半分しか無い」と言われることが日常茶飯事という。証拠は一切示されない。誰もが懐疑心を募らせているにも関わらず、誰も証拠を見せてくれと求めない。なぜなら、証拠を求めることは、相手をうそつき呼ばわりすることと同じだから。「競合のほうが安い価格を提示している」「他の買い手が高い値をつけている」などもよくある。証拠を求めても「ビジネス上の信義」を盾に、通常は体良く断られることが常だ。

自分がビジネス上の関わりを持つ人たちは誠実であり、その人達の言葉は信頼しうると考えたい。その一方で、このような信頼がナイーブすぎることも、人々は認識している。脅威を示して取引条件を引き上げてゆくこと(相手が条件に応じないなら、サプライヤー登録を取り消す、商品供給を拒否する、これまでの条件の破棄を主張する、など)を、正当な理由無いままに重ねてゆくと、売り手買い手双方ともに、対立的なスタンスのみが強まってゆく。

証拠を提示できなければ懐疑が強まる。懐疑は関係性を干上がらせ、取引も枯れてゆく。交渉者は、情報を開示しない際には、このことを常に念頭に置かなくてはならない。

悲劇的な航空機事故の家族と関係者の皆様に、深い哀悼の意を表します。

原典: Scepticism


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