臆せずに質問を

公開されました: 7 30 , 2014
投稿者: 増倉 洋

2011年、スカイマークは6機のエアバスA380を発注した。総額1911億円の取引であり、前払金として260億円を既に支払った。飛行機は完成しつつあり、10月に納入予定の機体は既にテスト飛行を終えているという。そして現在、スカイマークは、この取引を解約しようとしている。エアバスが求めてきた解約違約金は710億円。スカイマークの前期の売上は860億円であった。

良くない状況だ。不謹慎かもしれないが、この状況は、どこか交渉者としての魂を掻き立てられる側面がある。スカイマークはかなり劣勢に思える。もし自分が、スカイマークの側でこの交渉のテーブルに就いたなら、どうするだろうか?もちろん、メディア報道以外にもいろいろな事実はあるだろうが、取り敢えず、ここに出ている事実のみで交渉するとしたら?

まずは解約違約金の算定根拠について。710億円はどのように積算されたのだろうか?ぜひとも内訳を知りたいところだ。スカイマークはこの金額を「常軌を逸した金額」と表現している。だが自分達がこの金額をどう思うかで、目を曇らされてはならない。この金額は契約で定められているのかもしれないが、だとしても、契約の時点でそのように金額を定めるに至った根拠があるはずである。

大きな要求をいくつかのカタマリに分割することは、要求を行う側にとっても受ける側にとっても、メリットがある。大きな要求のままでは相手の口に入らない。年商860億円の会社が呑める大きさまで要求を砕いておくことは、エアバスにとっては回収がオール・オア・ナッシングとなるリスクを減らすことが出来る。スカイマークとってみれば、こちらから逆提案を出すための土台ができる。それぞれの項目について、エアバス側の優先順位はどうだろうか?当社の交渉スキルトレーニングに参加した人なら、このテクニックは「多項目要求」として知られているものと分かるだろう。
こう考えてみると、初期段階では、この710億円の内訳が得られるかどうかが、その後の交渉の成否を握るカギとなるように思える。

もう一つ、これとは別に押さえるべき点がある。スカイマークが6機を解約することは、エアバスにとって、どのような意味があるだろうか?財務、受注、サプライチェーン、製造などの面から検討し、それらを仮説として、初期のミーティングでエアバスに確認してみたい。

特に自分達に非があると感じるときには、交渉のベースとなる情報を相手に求めることを忘れがちである。だが、情報が無ければ、交渉は出来ない。

臆せずに質問をしよう。


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Hiroshi Masukura

筆者について:

増倉 洋
マイクロソフト株式会社、ワトソンワイアット株式会社、Genera Magic Inc.、プライスウォーターハウスクーパースHRS株式会社等を経て、スコットワーク株式会社代表に就任。プロジェクトマネジメント、IT、グローバル人事制度、リーダーシップ開発等を専門領域として、20年以上の実務とコンサルティング経験を有する。

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