テロリストの動きを止める

公開されました: 2 06 , 2014
投稿者: スティーブン・ホワイト

今週の金曜日、ソチで冬季オリンピックが始まった。だがメディアは、素晴らしい開会式や試合の熱気を伝えることよりも、チェチェンのテロリストがオリンピックをテロの標的とする可能性や、テロの脅威が試合に与える影響の分析などで溢れている。最近ロシアが同性愛を助長する行動に罰則を設ける法案を可決したこと、ソチのホテルがまだ完成していないことなどについての記事も多い。

テロの脅威は最も大きなトピックだ。ロシアは軍を動員してソチを「鉄の輪」で囲んだが、専門家によると、これはあまり役に立たないらしい。今回の冬季リンピックは300億ドルから500億ドルの費用がかかっており、この投資は観光産業を通して取り返さなくてはならないし、スタジアムが半分しか埋まらない事態も避けなくてはならない。つまり、テロの危険があるとしても、ソチを10万人規模の来訪者で溢れかえらせなくてはならないということだ。わかりきったことだが、警備当局が仮に99999人に正しい仕事をしたとして、たったひとりのテロリストを取り逃がしてしまえば、悲劇的な結果が待っている。

国際オリンピック委員会は、開催地選択の際に、安全性をもっと真剣に考慮すべきだったのではないか。2007年にオーストラリアや韓国を押しのけてこの地を開催会場に選んだ理由は何なのか?ロシアとチェチェンの対立は突然に起こった出来事ではない。対立は、ある面は宗教問題であり(チェンチェンはイスラム教でありロシアは正教会)、ある面は領土問題であり、ある面は過去200年間続いている憎悪の応報によるものだ。1990年台には交渉を通して解決しようという試みもなされたが数年で頓挫、チェンチェンはロシアのダゲスタン共和国に進行した。これに続いてチェンチェン反乱軍が虐殺に手を染めるようになり、モスクワのアパート爆破事件や、同じくモスクワの劇場で人質事件を起こしたりした。2004年には最悪のベスラン学校占拠事件まで引き起こしている。これらの事件に眼を向ければ、国際オリンピック委員会はソチでトラブルが起こる可能性を予見できたはずだが、それは考慮されなかった。さらには、近年のボストン・マラソンの爆弾テロやベオグラードでの事件を見れば、ソチでの開催は危ぶまれて当然だろう。

このように対立の根が深く深く刻まれている状況は、世界の他の地域にもいくらでもある。解決に向けての希望はあるのだろうか?歴史の教訓を鑑みれば、どちらかの一方的な勝利が長く続いた試しがない。交渉による決着も常に失敗してきた(パレスチナとイスラエルの対立、シリア、タミル地域の独立問題、スリランカ、中国とチベットの対立などで、米国の国務長官ジョン・ケリーがどれほどの成功を収めてきたか?)。

一つの代替案は、ある種のパワーバランス均衡を目指すことだろう。最終的な解決には至らないだろうが、双方が膠着状態を続けて動かないことが、戦闘を続けるよりも良い選択肢と認識させることだ。アラブ諸国のリーダーは20世紀を通してこれを実践してきた。安定に至る路を民主主義に求めるのではなく、独裁(ただし、慈悲深い)に求めた。不満に満ちた少数派が支配者に対して蜂起することは許容しない。人生は全ての望みが叶えられるというわけにはゆかない。それでも、現状はそれほど悪くない、という状況だ。アラブの春はそのような膠着状態を打ち壊し、破滅的な結果へと進んだ。エジプト、チュニジア、イエメン、シリア、そこにトルコも加わろうとしているのかもしれない。

パワーが拮抗した膠着状態を交渉のゴールにする、という点は、なかなか興味深い。これらが成功した事例では、全て例外なく、派閥間の対話は密に行われており、交渉は閉ざされたドアの向こうで行われて表に出ることもない。少数派も関与することができるし、課題を話し合い、解決する場所がある。すべては閉ざされたドアの向こう側での話だ。

問題なのは、世紀のスポーツイベントという巨大なパブリシティの下では、ドアの閉ざされた世界を持つことが出来ないという点だ。ロシアとチェチェンは話し合うことなく、ソチでの危険は続いていゆく。

これから先2週間、平和が続き新聞の見出しは世界新記録のニュースで埋め尽くされることを祈ろう。無辜の人々の命が失われたニュースではなくて。

原典:  Freezing the Terrorists Out


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