調整ではなく交渉を

公開されました: 10 05 , 2014
投稿者: 増倉 洋

日本で交渉スキルトレーニングの提供を始めてから1年半が経過した。その間にトレーニングコースやコーチングを通して、日本人に特徴的な交渉行動をいくつか眼にしてきた。今回はその中から「調整」を取り上げてみよう。

「調整する」という言葉は仕事の現場で広く使われている。一番多いのは「会議のスケジュールを調整する」だろう。これは読んで字の如し、それ以上の意味もそれ以下の意味も無い。

ところが「納品のスケジュールを調整する」や「報告書の提出期限を調整する」になると、急にきな臭くなる。これらは何か作業が絡んでいる「調整」だが、どんなことが行われるだろうか?

  • 営業や部門長など、必ずしも作業が行われる場の情況を熟知していない人が「調整」を約束してくる
  • 「調整」を約束した人は、作業を行う部門との会議をスケジュールする
  • 会議までの間に上長や周囲などに根回しを行い、作業部門が合意したスケジュールに応じざるを得ないよう「世論」を造る
  • 会議では作業部門がゆっくりと降伏するのを待つ。その際にはたくさんの「説得」が行われる

製造部門や技術部門、IT部門など、一見すると無理をすれば融通がききそうな部門が「調整」の犠牲者になることが多い。犠牲者になる部門はその組織の中で常に決まっているといっても良いほどだ。これは健全な姿だろうか?

頻繁に「ゆっくりとした降伏」を強いられる部門にあなたが居るとしたら、どのような戦術をとるだろうか?スケジュールには十分すぎる余裕を(短縮されるなら、最初からいっぱいいっぱいのスケジュールを組む人は居ない)、人員や機材の予算は常に多めに(なにしろ急に何を言い出されるか分からない)、それでも現場は疲弊し、中長期で生産性の向上をおこなうプロジェクトも行えなくなるだろう。「調整の被害」はこうして固定化してゆく。

このような情況を避けるためには、誰が行動すべきだろうか?私は「調整の被害者になっている人こそ、調整の被害者になることを避けるべく行動する責任がある」と考える。調整を求める人には、それなりの理由がある。だからといって何の付帯条件もなしに降伏してしまえば、次からもその部門は同じように降伏すると周囲は期待するようになる。周囲にとって、自分自身にとって、降伏の前例が重なってゆく。

その調整に応じるのかどうか、前例をつくることがどういう意味を持つのか、考えてみよう。これが繰り返されれば中長期的に自部門の力を削いでゆく前例とならないだろうか?もしそうなら、小さなことでも良いので見返りを得るよう考えてみると良いだろう。調整を求められた人は、調整ではなく交渉すべきである。


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Hiroshi Masukura

筆者について:

増倉 洋
マイクロソフト株式会社、ワトソンワイアット株式会社、Genera Magic Inc.、プライスウォーターハウスクーパースHRS株式会社等を経て、スコットワーク株式会社代表に就任。プロジェクトマネジメント、IT、グローバル人事制度、リーダーシップ開発等を専門領域として、20年以上の実務とコンサルティング経験を有する。

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