複雑なゲーム

公開されました: 10 16 , 2014
投稿者: スティーブン・ホワイト

2014年のノーベル経済学賞はジャン・ティロール教授に授与すると発表された。受賞理由は大企業の規制についての研究であった。ティロール教授はゲーム理論の研究で名を成している。ドリュー・フューデンバーグ氏との共著「Game Theory」は読みやすい本ではない。数式が随所にちりばめられたこの本は、市場の参加者の行動について説明を試みている。市場の中で各個人は、顧客やサプライヤー、競合が未来にどのように影響を及ぼしあうかにつて予測し、その予測に基づいて意思決定をおこなう。この本が取り上げる最初の実例は、パイの製造業者がゲーム理論を使ってある特定の日の値段を決める話だ。最初の例から非常に難解であり、理解は至難の業だ。

今回この時期にティロール教授がノーベル経済学賞を受賞したのは何か皮肉な巡り合わせに思える。英国に籍を置くスーパーマーケットのテスコは巨大企業だ。テスコは今年の利益を2億5000万ポンドも過剰に見積もっていたことが発覚し、現在投資家からも当局からも非常に厳しい視線に晒されている。問題はテスコが大手サプライヤーとの取引で支払い残高を計上する方法にあった。残高にはスーパーマーケットが購入した商品の代金に加え、テスコでの販促のためにサプライヤーが支払った費用が含まれている。販促は年々複雑になっている。テスコの新CEOデビット・ルイスが就任後わずか1週間後にこの問題が発覚したのがは、単なる偶然だろうか?ルイス氏はテスコのCEOに就任する前はユニリーバ―の上級マネージャーだった。ユニリーバはテスコに数知れないブランドを納入している。パイに必ず添えられるウォールズのアイスクリームもだ。ひょっとするとルイス氏は既に問題の在処に気がついていたのかもしれない。

テスコが窮地に陥っている唯一無二の問題児というわけではない。英国のテスコ以外の巨大スーパーマーケットチェーンも、他の国の小売業者も、サプライヤーと同じような取り決めをしており、同じような会計上の問題を抱えている。これらの根底には、市場が売り手と買い手の関係を適切に規制する仕組みを持っていない、という問題がある。スーパーマーケットと農業生産者のようにパワーバランスが不均衡な場合は言うまでもなく、スーパーマーケットと著名ブランドを持つサプライヤーのようにパワーが均衡している場合でも、この問題は同じように発生する。市場の力がうまく機能しないのであれば政府が関与せざるを得なくなるが、政府の関与もこれまでのところ成功しているとは言いがたい。

我々はみなティロール教授の本を読むべきだろう。彼は100万ドルの賞金を受け取ったが、それだけの価値はある。

原文: Complicated Games


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