ボパール

公開されました: 12 04 , 2014
投稿者: スティーブン・ホワイト

とあるアメリカ大統領が(あなたの支持政党によって、アイゼンハワー以来の誰とでも思って頂いて構わない)9歳児のクラスを訪問した。そのクラスは「悲劇」という単語の意味について話し合っていた。

大統領は「悲劇という言葉の例を教えてくれるかな?」と尋ねた。ピーターは「私の友人は道路に飛び出してクルマに轢かれて亡くなりました。これは悲劇です」と言った。「違うな」と大統領、「それは事故だ」。ジェーンは「工場で化学物質の漏洩事故が起こり、2500人が死亡しました。これは悲劇です」と発言した。「いや」と大統領、「私ならは、その出来事は壊滅的な損失と呼ぶだろう」。

ウィリアムは「イカれたアメリカの軍人が発射した地対空ミサイルで大統領専用機が空中で爆破され、ちょうどあなたが乗っていました。これは悲劇です」と言った。

「素晴らしい」と大統領。「これこそ完璧な例だ。なぜこれが悲劇と思うのかね?」「これは壊滅的な損失ではないし、事故でもなさそうですから」とその子は答えた。

悲劇の定義は様々かもしれないが、私の定義はジェーンの定義と同じだ。ユニオン·カーバイド・インディアの ボパール工場における悲劇が再びニュースで伝えられているが、事故の悲惨さを考えれば驚くに当たらない。事件はちょうど30年前の、1984年の12月2日から3日にかけて起こった。これほどの大惨事をニュースで目にすることは滅多にない。

悲劇は現在も進行中であり、ボパールの惨事は決して過去ではない。惨劇の最中に土壌や水源に深く染み込んだ化学物質は恐ろしいほどの数の病気や遺伝性変異を引き起こし、現在も事態は収束していない。2014年の報告では「12万人から15万人の被害者が現在も重篤な後遺症に苦しんでいる。神経の損傷、成長異常、婦人科疾患、呼吸器系の問題、先天性の欠損、癌と結核への罹病率の上昇などが見いだされる」とのことだ。工場の敷地は現在国が所有しているが、除染はされていない。また、近い将来に除染が行われる予定もないようだ。ユニオン·カーバイドは事故の5年後に補償をおこない、インドの最高裁判所はこれを支持した。しかしながら、ユニオン・カーバイトが引き起こした悲劇と住民への多大な損害を考えれば、この補償は雀の涙とインドの国民は受け止めている。負傷した被害者が補償で得た金額は一人平均で400ドル、死亡した場合はたったの1000ドルだった。

ところが、ここにきて追加の補償が支払われるかもしれないという希望が見え始めた。ユニオン·カーバイドは2001年にダウケミカルに買収された。近年、ダウの株主たちは会社の経営層にプレッシャーをかけている。この事故に対して会社が負うべき経済的な責任を再評価し、犠牲者への更なる補償を交渉せよ、と。株主の見方はこうだ。ダウがインド市場でうまくいっていないのは、ボパールでの悪評によるものだろう。インド市場の業績が悪い理由に向き合う必要がある。慈悲の心からではなく、ビジネス上の正しい行動といして。

良き交渉者は、意義のある取引とは、関与者全員が長期にわたり進んで従うような取引だと知っている。ユニオン·カーバイド社の1989年の決着は、その時は良い取引と見られていたが、今となってはそんなことなど何の関係もない。あの時の合意は公正ではなく、ダウ・ケミカルの事業に長期にわたりマイナスの影響を与え続けている。悪影響はおそらくインド一国だけに留まらず、被害者の窮状を目にした世界中の購買調達関係者にも及んでいるだろう。道徳的に正しいのみならず、企業と社会との関係性を改善するためにも、ダウの経営陣は被害者からの苦痛に耳を傾け、行動しなくてはならない。

原文: Bhopal


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