自由人のみが交渉できる

公開されました: 12 06 , 2013
投稿者: デビット・バニスター

「コーヒーブレークの後で、できるだけ早くお席にお戻り下さい」1999年、ケープタウンで開催されたKPMGパートナーミーティングの会議主催者はそうアナウンスした。「特別なゲストを紹介します」20分後、我々150人ほどのグループは、ネルソン・マンデラがキャットウォークをゆっくりと歩き、中央の演台に近づいてゆくのを眺めていた。その時には80歳の誕生日が近かった。彼はゆっくりと用意されたスピーチ原稿を読み上げた。ケープタウンが我々のような国際的なビジネスリーダーを迎え入れることの意義を説き、歓迎の言葉を述べた。どこか予想のつく内容であり、私は少し失望した。「では、最後に…」彼はこれまで10分間読み上げてきた原稿を畳み、話し始めた。続く20分間は原稿もなく、本当に素晴らしいスピーチだった。ANSがどのように民主南アフリカ会議を通して権力基盤を作り上げてきたのか、人々はいかに過去からの因縁に捕らわれて長年に渡る人種差別への復讐という手段をとりがちなのか。聴衆は彼が語る物語に心を奪われていた。貧困の中で育ち、過去の苦難に復讐ではなく融和によって報いようと志した黒人議員の物語だった。彼がホールを去る際には、我々は身を乗り出し手を突き出して彼と握手を求め、その様子はあたかも聖書の秘跡を受けるかのごとくであった。私は初めて南アフリカを訪れた時のことを思い出していた。シニアエグゼクティブとのセッションを行っており、フリップチャートにはリーダーに求められる資質を書きだそうとしていた。「我が国の大統領はリーダーシップについてはちょっとした知見がある」と白人のエグゼクティブは言った。「そこに’情熱’と書いてもらえないか?読み方は、’自由への長い道’だ」私は彼の言うとおりにした。つい最近、南アメリカを初めて訪れる女性に、マンデラの自伝「自由への長い道」を読むように進めた。この国の歴史と文化を知り、亡くなったばかりの指導者の伝説を知るために。

殆ど20年前にこの国を初めて訪ねて以来、ロベン島や黒人住居区を訪ね、この国が独裁主義や暴君による専制、デマゴーグなどに陥らなかったのはなぜだろうかと考えていた。他の国では「自由」が手に入った途端に、これらが幅をきかせるようになる。おそらくはマンデラ自身の資質によるものだろう。本を読んだ人なら知っている話だろうが、彼が釈放される何年か前に、時の大統領P.W. ボタがANCと彼の政治的野心を放棄するという条件のもとで、釈放を持ちかけた。彼の答えは「自由人のみが交渉できる」というものであり、釈放を拒否して刑務所にとどまった。数年後には、彼は南アフリカで最も力のある人物となっていた。多くの人の記憶に残るのは、彼がどのように力を行使したのかだ。私はかつでアメリカのとある著名コンサルタントと仕事をしたことがある。彼はクライアントにこういった。「歴史を変えることは出来ないが、歴史から学ぶことはできる」思うに、マンデラが歴史から学んだのは、融和という彼の目的は、寛容さと和解という原理原則を通してのみ達成されるものであり、不正な過去を繰り返しても何も達成できないという点だろう。我々は原理原則は交渉できないことを知っている。彼が自由人として交渉に望んだ際には、寛容さと和解の原理原則をもって臨み、そこから得られる力を自由と民主主義、国の融和というゴールに向けることが出来た。また、彼自身や周囲の人々を、かつてのパートナー会議で「用意に陥る過ち」と呼んだ復讐の路をだどることを防いだ。そして今日、彼がこの世を去って数時間が経過した現在、全世界の人々は彼を思い出し、彼の原理原則と、力を善をなすためにに使うことについて思いを馳せている。彼の伝説から学べる多くの教訓の一つは、力を得たものは、目的について注意深く考えなくてはならない、ということだ。そしてまた、力を行使する際に、自身の心を探ってみる、ということでもある。

原典:  Only Free Men Can Negotiate


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