括弧付きの言葉

公開されました: 11 14 , 2013
投稿者: スティーブン・ホワイト

先週ジュネーブにイランの外相と超大国の代表者が集まり、イランの核開発の将来について交渉が行われた。一時的な状態とはいえ、この交渉は失敗に終わった。この交渉の後、米国の国務長官ジョン・ケリーはBBCのインタビューに応じた。全文は こちらで読める。私が興味をそそられたのは、以下の部分だ。...

質問: …あなたが金曜日にジュネーブに到着した時に、ドラフトには合意できる点はいくつもあり、、またイランは少なくとも交渉のテーブルについていました。ところが、フランスが反対したために、イランはテヘランに戻って対応を協議せざるを得なくなったと聞いていますが、いかがでしょうか?

ケリー長官: いや、交渉にはは括弧つきの部分がありました。率直に、正直に言って、我々のドラフトには括弧をつけざるを得なかった部分があった。イランは条項の一部に反対しており、話し合い交渉しなくてはなりませんでした。なので、イギリスだろうとフランスだろうとドイツだろうと、その場に居た全員がオープンな交渉をおこないました。

ああ、なるほど。これは、あの素晴らしい「括弧付きの言葉」という交渉戦術だな、と私は思った(アメリカの読者の皆さん、これは皮肉です)。一体どういうものなのか?

「括弧を付ける」ことは、当事者双方のギャップをよりこれまでよりも小さく見せながらも情況に柔軟性を入れ込むテクニックだ。よく使われるのは、当事者間で数字のギャップが大きい時。例えば、買い手が10%のディスカントを求め、売り手は2%で応じている場合など。売り手が「もし買い手が7%まで要求を下げてくれれば、当方は4%までディスカウントを拡大する」という提案をした場合、これが「括弧」だ。ギャップは10-2=8%ではなく、7-4=3%に見える。変数は1つしか使わない。例えば「もし数量を100にしてくれたら、ディスカウントを4%にします」というのような、複数の変数が係る取引とは違う。

「括弧付き」を使って相手に柔軟性を知らしめることは両刃の剣となる。このテクニックを通して相手を動かすことが出来る場合がある。相手があなたの言葉に込められた柔軟性に気がつき、かつ協調的であるならば。クリエイティブな交渉者を相手にするなら、これは良い方向に進むかもしれない。

しかしこのテクニックは同時に大きな弱点を抱えている。相手の決定を引き伸ばし、更なる譲歩が得られると思わせてしまう点だ。国際政治やイランの核開発戦術をここで分析する気はないが、イランの行動は、P5+1の場での交渉で1インチでもこちらが譲歩すると、相手は何マイルも詰めてくる、ということを何年も繰り返している。

ビジネスでの交渉経験がある読者なら、このテクニックは最もヌルい交渉方法だと冷笑することだろう。このような提案を受けた買い手は次のように思うに違いない。「ああ、こちらは何も出していないし同意もしていないのに4%ディスカウントまで来たか。ということは、もっと行けるだろう。ではNoと言い、次にどうなるか見てみよう」

ジョン・ケリーの言う「括弧付き」は違う意味かもしれない。彼はこの言葉を「具体的に特定されていない」あるいは「代替しうる」という意味で使ったかもしれない。だとしても、「括弧」があるなら柔軟性があるということであり、柔軟性を弱みと見る交渉相手との交渉で括弧をつかうのは賢くない。

上手い交渉者は相手のスタイルや過去の行動を見る。イランは大統領が代わり、この交渉は新たな時代の幕開けになると主張する人が居るが、現在のイランの支配階級を見ればよい。本当に意思決定をしているグループは全く変わっていない。というわけで、先週ジュネーブで「括弧付きの言葉」が登場したのは大変に残念なことと考えている。これまで「括弧付きの言葉」が使われてきた時は、殆どそうであったように。

原典: Bracketed Language


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