イバン・ロジャース氏の辞任 ― 破壊的行動のパワー


2017年は、たぶんそれほど驚異に満ちた一年にはならないだろう。なにしろ2016年は本当に驚きの一年だったのだから。カンファレンスで華麗なプレゼンターの直後の時間を割り当てられた不運な発表者のようなものだ。ところが、はやくも今年初の驚きがやってきた。よく考えれば有り得ない話ではないが。英国のEU常任代表イバン・ロジャース氏が突然に辞任することとなった。ロジャース氏は非の打ち所のないほどの完璧なタイミングで周囲に驚愕を与えたのみならず(今年最初のBrexit爆弾だ)、同僚に書き送った離任の声明の中で「Brexitの準備状況にはぞっとする」と明かした。

権威者たちはロジャース氏が居なくなることには苛立ちをつのらせている。EUの官僚機構や意思決定について、ロジャース氏ほどの経験を持つ人物は居ない。彼の直近の役目は、交渉相手であるヨーロッパ人の、国ごと、あるいは個人ごとの交渉ボジションを見つけ、英国の戦略チームに知らせることだった。情報はパワーだ。当事者間の潜在的な乖離や反目不一致がある点は、特に。テレサ・メイ首相は交渉戦術はあいまいにして明かさないというスタンスをとっているが、自陣営の仲間内での争いを表立ってみせてしまうのは貧弱な作戦だし、危険ですらあるだろう。ロジャース氏はヨーロッパ各国の首脳の考えを情報収集してきたが、この役割は死命を制するほどに重要なものだった。後任のティム・バロー氏はEUにおける経験があるのものの、情報の流れに入り込めるまでの間に貴重な時間が浪費されることだろう。

ロジャース氏の辞任に際してEUは惜別の意を表明した。これはつまり、ロジャース氏が優秀な官僚であり、英国の意を理解した上で、ビジネスとしてプロフェッショナルな態度を貫き、そして仕事が出来たからだろうか?

それとも、彼は公務員として行動の予測のつく人物であり、外交コミュニティのルールに従って動き、交渉でも定められた手順を守ると信頼できたが故の惜別の意なのだろうか?ロジャース氏の後継者は、彼とは異なり、破壊的で、予測が付きにくい暴れ馬で、ルールなどお構いなしと無視を決め込み、EUの外交コミュニティの住民を混乱に陥れるのだろうか?

後任のティム・バロー氏は一見すると良い選択に思える。テレサ・メイ首相はバロー氏を「エネルギーと創造性を兼ね備えた経験豊富なタフ・ネゴシエーター」と呼んだ。だが、つまるところ、彼もまた職業外交官だ。これまでの交渉はすべて、国家公務員の立場で行ってきた。

英国がこれから向かう交渉を制するために何よりも必要としているのは、ドナルド・トランプ氏の英国版だろう。もちろん、性差別、下品な言葉遣い、人種差別はあらかじめ抜いておく必要があるが。物事がこれまである方法で行われてきたからといって、これからも同じように続けなくてはならない理由はない。Brexit交渉の根源には変革とパワーがある。交渉戦術として破壊的なものを採用すれば、自ずと変革を促進することになる。特に、破壊者がパワーを持ち、Brexit支持者たちが常日頃言い続けているように、英国がヨーロッパを必要としているよりも、ヨーロッパは英国を必要としている状況であれば。

一方で、破壊者として結果を出すためには、公務員にはまずもって見出すことのできないパーソナリティ特性が必要だ。超絶的な自信に満ち、賢く、ストリートワイズであり、生まれついてのトレーダー、感情によって相手を動かすことに長けており、直感的にはありえない動き方をする。自身の知恵を信じ、辣腕を振るい、策を弄する。大言壮語にも事欠かない。そして悪賢い。仮にそんな人物がBrexit交渉を率いてていたとしたらどんなか、想像してみるとよい。正義や公正さという観点からは酷く勘に障るだろうし、醜いだろうけれど、でも、たしかにエキサイティングだ。

残念なことに、新しいEU常任代表の、交渉者としての履歴の中には「悪賢さ」は何一つ見当たらない。それどころか、Brexitに関わる交渉者の誰の中にも。テもしバロー氏が少しでもこのような資質を備えていたとしたら、2017年はものすごく面白い一年になっているのだろうに。

 

原文:  Sir Ivan Rogers - The Power of Disruptive Behaviour

Written by スティーブン・ホワイト at 00:00

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